──―――あれは何だったんだろ。 思い出しながら、私は昼寝から目覚めた。 原因は家の前で喋っている学生さんの、大きな笑い声。 「ひっさびさに晴れたよねー」 「ほーんと。いい天気。私こういう雲ひとつない感じ、すごい好き…続きを読む
長編
昼と夜のデイジー(旧版) プロローグ
変な夢を見たことがある。 七歳か八歳のときだったと思う。 そのころ私はもう自分の部屋で眠っていた。 夢の中で私は眠れなくて、暗いから部屋の中はあまりよく見えない。 夜は少し恐い。 でも、気分を紛らわせるために…続きを読む
カラス元帥とその妻 あとがき
当初思っていたよりもずっと長くなってしまいましたが、めでたく完結です。 『じれじれべたべた』をこころがけてみたのですが、いかがでしたでしょうか。 主人公の一人語りにしてみたら、ちょっと状況描写が足りない作品になって…続きを読む
カラス元帥とその妻 エピローグ
それからどうなったのかって? もうそろそろこの話のパターンつかんでよね。 別に変化なし、よ。 退院してからも相変らずカラスさんは仏頂面で、うんとかすんとかしか言わない。 ああ、そうだ。あえて挙げるとすれば…やっ…続きを読む
カラス元帥とその妻 44
舞踏会が終ったら、休みを取って、遅い新婚旅行に出かけよう。そう思って、舞踏会後はいつも以上に仕事に励んだ。休みの直前に、ある地方で不穏な動きがあるから、視察を装って調査してくれと陛下直々に頼まれた。 俺は、頼むから休…続きを読む
カラス元帥とその妻 43
全力疾走で病室に飛び込んできた人間に『おかえりなさい』と言われても、こちらはなんと答えたらいいのか分からない。 いつも通り「ああ」と言ってしまってから、アカエが大分やつれているのに気付いた。 アカエはゆっくりとこち…続きを読む
カラス元帥とその妻 42
二日後、熱は下がったという手紙を受け取った。 確かに一安心はしたけれど、それからは無限の時間があった。毎日平穏に過ぎていくけれど、長い長い平穏だった。 カジムには毎日手紙を書いた。 でも、やっぱり前書いていたのと…続きを読む
カラス元帥とその妻 41
翌日の夜、追伸が届いた。恐らく昨日の夜に書かれ、早馬で届けられたんだわ。いえ、そうに決まってる。 『元帥殿は、自室にて夫人からの手紙を読み返しており、手紙を届けに来たと言った男の声に反応し、即座に鍵を開けドアを開いた。…続きを読む
カラス元帥とその妻 40
軍から送られてきた通知は、刺された直後のものらしく、状況説明は曖昧。 まず、軍は視察七件目の地区で宿泊中だったこと。 カジムは刺された時点で、宿の割り当てられた部屋、もちろん個室にいたこと。 ナイフで複数箇所刺さ…続きを読む
カラス元帥とその妻 39
押さえなきゃ。怒ってるみたいに聞こえちゃうから。事実怒ってるんだけど。 「あ…すまん。明日から家を空けることになってて」 『なってて』? 「どれぐらい?」 家の食卓に向かって歩きながら問い詰める。 「二週間」 サ…続きを読む