短編

或る国王の話

小鳥のさえずり。いつもの、朝。 ただ、いつもと違う一点がある。 今日は、見合いをする。相手は隣国の姫。外交上の大切な行事だった。 隣国とはこれまで争い続きだった。それもこれも、すべてこちらの問題だった。 先代国王は相当の…続きを読む

イチゴ練乳

疲れた。だるい。 このところハードワークすぎるわ。全く。 前はこんなんじゃなかったのよ。もっとこのお屋敷の使用人いっぱいいたの。 私以外に…そうね、五、六人はいたわ。 みぃーんな、辞めてっちゃった。 だって旦那様がおかし…続きを読む

かれのこと

~①~ 君は母になるべき人だ。 思うに、その一見気難しい性格は、実のところ寛容さを秘めている。 君の機嫌が『常時著しく低空飛行状態にある』と考える人々が世間に多数いるそうだが、それは誤りである。 表面的な不機嫌さは寛容の…続きを読む

りんごの皮をむく人は

何でこんな人のこと好きになっちゃったんだろう。 たった今その人物を目の前にして考えてしまう。もう手遅れだと分かっているのに。 出会いはサイアクだった。 国王の結婚式。表は確かに優雅だし、何よりおめでたい行事なのだが、ちょ…続きを読む

タテヨコの関係

私には最近好きな人ができた。 その人は職場の同僚で、こう言うのもなんだが、白いデブだ。 どういうわけなのか人当りは大変良い人物で、同僚の男性陣の中ではどちらかと言えば中心に立っている人である。女性陣からも受けがよく、恋愛…続きを読む