午前中は今の従業員の各持ち場紹介で終わり。 ということで、あのティータイムのあとコーウィッヂにだだっ広い屋敷内と庭を案内されたユンは今、ジーの案内で自分の部屋になる場所に通されていた。 その間に回想した屋敷案内は、予想…続きを読む
長編
領主館へようこそ 5
「へ?」「箒とモップって、意思疎通できないですよね? 道具ですよね? モノですよね? これ、この…方たち、なんで、その」 きょとんとした顔から真顔になったコーウィッヂ。「魔法の箒とモップなんだ。 それぞれ人格があるんだよ…続きを読む
領主館へようこそ 4
─────これ、は? 浮かんだまま動かない箒。 ユンは何をしていいのか全く分からないまま立ちすくんだ。 とりあえず叫ぶ? いや、雇い先に到着して即叫び声をあげるなんてしちゃだめだ。 明らかに不信なのだから、雇い主に報告す…続きを読む
領主館へようこそ 3
─────ナニコレ。 あいにくの曇天だけれど、木々にぐるりと囲まれたその丘。 馬車の行く手をまっすぐに、真ん中に黄土色の道が続いている。 門に近づくと壁に囲まれたその向こうにそびえたっていた。 赤レンガ作りで飾り窓がたく…続きを読む
領主館へようこそ 2
─────そもそも高級馬車って噂には聞いたことあったんだけど…。 まさか自分がこの目にする日が来ようとは。 そして乗ることになろうとは。 ユンはだた食い入るように領主ジョットがそれに乗りこむ姿を見つめた。 だって乗り方が…続きを読む
領主館へようこそ 1
「ようこそエトワへ! はじめまして! 僕がエトワ領主のジョット・コーウィッヂ、42歳デェーッス☆」 畑道のど真ん中で仁王立ちして目の脇にピースサインを作って決めているどう見ても十代半ばの少年を目の前に、ユンはこう思った。…続きを読む
領主館へようこそ プロローグ
「この辺、出るらしいぞ」 茂みの中を抜けてすぐの見晴らしのいい崖、つまり高台。 その岩場から双眼鏡で近場から遠くの町々をも眺めながら男はもう一人に告げた。「当たり前だろ。敵兵が出ないんならなんで俺たち見張りしないといけな…続きを読む
昼と夜のデイジー あとがき
本作、最大の良かったところは、これ。完結させられたこと(爆)。これに尽きます。『10年ひと昔』という意味がよくわかるぐらい、自分があの頃この話をどうしようと思っていたのか忘れており、自分で自分にがっかりしました。実はこの…続きを読む
昼と夜のデイジー エピローグ
「あ、ところで」 この先の積もる話は座ってお茶でも飲みながらにしようということになり 小屋改め我が家に足を向けながら、デイジーはさっきよりも幾分か赤みを増して潤んだ唇を動かして、首筋を手で揉んで少し俯きながら何かを反省し…続きを読む
昼と夜のデイジー 58
森は静まり返っている。 ドルはあんなに叫んだ後なのに、自分の中にまだ揺蕩う何かが残っているのを感じ、少しずつそれをささやくように口から吐き出し続けた。 「馬鹿なこと言うなよ」 ドル自身の声は明らかに震えていた。 「私、真…続きを読む