長編

領主館へようこそ 16

 迎えた今日この日。「急にごめんね」「いい。気にするな」「そう言うと思ってた」 魔法使いのご友人はコーウィッヂとあいさつを交わしながら入ってきたけど、コーウィッヂから目配せであいさつはいいとのサイン。 部屋の場所の案内と…続きを読む

領主館へようこそ 15

「じゃ、最終調整問題なしってことなので、お披露目ね」 更衣室として利用した空き部屋から階下へ。 誰の声も聞こえない。音もない。 このお屋敷にしては珍しい状況になんとなく気が咎め、足音を立てないように階段を降りる。 足音が…続きを読む

領主館へようこそ 14

「僕が持ってっとくよ」 あの後すぐにその友人に手紙を書いたコーウィッヂ。 そして数日後に届いた返信の『すぐに向かう』との内容からコーウィッヂ曰く、明後日くらいだろうとのこと。 コーウィッヂと話した限り、今考えている策は一…続きを読む

領主館へようこそ 13

「よかったね、みどりちゃん」 みどりちゃんのボディは今、珪藻土マット6枚で作成された箱状の入れ物の中に丸っと納まっていた。 あの後コーウィッヂとジーに説明し、翌週の定期販売で来た時にあの商人から入手。「ありがとう!」 ユ…続きを読む

領主館へようこそ 12

「こんな感じで、ペトッとホコリとかを取って、ペッと捨ててってくれてるんだ」 やさしいみどりちゃんはコーウィッヂの説明通りホコリをその表皮にくっつけ、中に取り込み、まとめて適当なところに吐き出す様を実演してくれている。 ユ…続きを読む

領主館へようこそ 11

「どうっすか?」「いりません」 迎えた週末の朝。いつもの業者らしい。「バスルームのマットなら間に合ってます」「いや、でも洗濯不要なんすよ? 程よく湿気をとってくれる調湿効果もあるんす、どうすか? 珪藻土マット!」 突然や…続きを読む

領主館へようこそ 10

「みどりちゃんはねぇ、う~ん、まじめだね」 コーウィッヂは中空を眺めながら一つ一つ言葉を紡いだ。「たぶんうちで働いてくれてる人の中では一番真面目。 拭き掃除以外に害虫駆除もしてくれてるんだけどね。 おかげで我が家はネズミ…続きを読む

領主館へようこそ 9

 疲れた。 夕食も終えたユンは高速で支度してベッドに倒れこんだ。 あとはもう寝るだけ。 疲れの質がおかしいことにも気づいているが、静かで虫の声だけ響く新しい自分の部屋は心地よく。 もう全身が泥のようだ。 ここまで疲れたの…続きを読む

領主館へようこそ 8

「いつもこんな感じなんですか?」 色々聞きだしつつ調理場で洗った皿を拭いて片付けたユンは、そこまで質問してきたのと同様できるだけYES・NOだけで答えられるようにジーに切り出した。 ジーは腕を振って絞ったふきんをパンっと…続きを読む

領主館へようこそ 7

 ジーは普通に雇い主と同じタイミングでナイフとフォークを手にしている。 ユンはそっとそれらに触れ、そしてついにその手に握りしめた。 今目の前で二人がしている食べ方をよく見て、前の雇い主がやっていた食べ方を思い出しながら肉…続きを読む