長編

領主館へようこそ 26

「ああ、料理人の手配の手紙は出したんで、後は部屋の中だけだよね。 貴族じゃなくて実務担当だし、そこまで気を遣うことはなさそう。 ていうか、魔物の調査担当だから多分あんまり部屋とか入らないでほしい系だと思う。 祭りで忙しい…続きを読む

領主館へようこそ 25

 その日の作業が終わって領主館の調理場でグリーンたまねぎを刻みながら、ユンは村の人たちを思い出していた。 村長は、『だってよ、領主様だぜ?』 ケイジさんとか、他の人達は、『コーウィッヂ様はいい人よね』『手ぇ上げたり罵声あ…続きを読む

領主館へようこそ 24

 その話が本当ならコーウィッヂは10歳くらいからあの感じということに。─────あり得ない。 成長の早い大人びた10歳の男の子が、20歳そこそこの若作りな男性と同じなわけが。 就職当初に考えた案の中だと、人間じゃなくて魔…続きを読む

領主館へようこそ 23

「村人集めてるのが元山賊のお頭なわけよ。 そもそも村作った時点で村の若い衆イコールほぼ山賊一味。 そのあと増えたのも基本私と同じような感じで昔多少なりとも付き合いがあったり、知り合いの知り合いで訳アリのが多い分、話が合う…続きを読む

領主館へようこそ 22

「数人?」「タリアッテじいさんでしょ? モーリアばあさんでしょ? アンヌばあさんでしょ? あとは…ん~…あれ、そんだけか? ああ、そんだけだわ。うん」 9年以上前からいたのはご年配の方々だけということか。「ユンさんこそ、…続きを読む

領主館へようこそ 21

「あ~~~ッはははッあはははハハハハハハ~~~~~~~~!!!!!」 聞き遂げたコーウィッヂの笑いは止まる気配がない。 腹を抱えた前傾姿勢を全く崩せなくなっているコーウィッヂ。 涙目になっていないのが不思議なぐらい。 屋…続きを読む

領主館へようこそ 20

─────空気感が落ち着いたのは良かったけど、謎が増えていくなぁ…。 ベータが去るその日の朝食を片付けながらユンはぼんやり考えた。 建築場所の整備などは一通り済み、この後発注をかけて突貫工事をするらしい。「もう一回現場と…続きを読む

領主館へようこそ 19

 あんなちょっとした事件が起こったけれど、その後はコーウィッヂもベータも割とさっと元通りだったのはどういうことだろう。 ユンがいぶかしんだのはほんのつかの間で、今コーウィッヂとベータは二人して二階の空き部屋にこもっている…続きを読む

領主館へようこそ 18

『明日の午後は離れのほうを見ておきたい』 『場所、案内してなかったね』というコーウィッヂの一言で、ベータとともにユンもついていくことになったその場所は森の中にあった。 屋敷からほど近いが意識しないと気が付かないだろう、崖…続きを読む

領主館へようこそ 17

「…わかった」「ごめん、ほんと」 ベータは口元の端をほんの少し上に持ち上げた。「俺のほうが昔からずっと世話になっている。 これぐらいはどうということもない」「ありがとう」「すぐにとりかかる。予定地に案内してくれ」 ベータ…続きを読む