長編

領主館へようこそ 46

 タオルや盥やいりそうなものを一通り持って二階に駆け上ると、部屋のドアはその音を聞きつけたコーウィッヂが中から開けてくれた。 開けるや否や椅子に戻ってジーの横に座るコーウィッヂ。 顔、というより、頭と頭の距離が近い。——…続きを読む

領主館へようこそ 45

 ジーが本格的に伏せりだしてから2日目。朝食前。「おはようございます」 ユンは手に持った水差しをジーの傍らのテーブルに置いた。 一昨日・昨日とコーウィッヂは日中の一時期だけここにとどまっていた。 朝覗きに来ることはほぼな…続きを読む

領主館へようこそ 44

「今日も…」「かしこまりました」 部屋のベッドに横たわったまま起き上がることができなくなって数日。 いつ本人の様子を見に行ったのか、コーウィッヂは朝食の食卓に現れてユンに告げた。 昨日来たリアは、『昔「勝手にどっかで野垂…続きを読む

領主館へようこそ 43

「でも、そんなようにはとても…」 どう見ても風邪とか、ちょっと調子が悪いだけにしか見えない。 コーウィッヂは上体を起こしたものの、目はティーカップを見つめたまま。「…ジーにはもともと持病があるんだ。 完治が難しい病気でね…続きを読む

領主館へようこそ 42

「話ついたから」 帰ってきて開口一番そういうと、そのまま階段を上っていくコーウィッヂ。 ユンが用意していた休息用のお茶菓子はまるっと無駄になった。「ユンさん! ジー、どうだった?」 手すりから身を乗り出すコーウィッヂに、…続きを読む

領主館へようこそ 41

 『貰ったからには使わないと』の根性で翌朝。 さらに翌朝。 翌々朝。 そうこうしているうちに1か月。 日にちだけは過ぎていくのにコーウィッヂもジーも特に無反応なので、結局このリボンは何だったんだ? それはそれとして清掃3…続きを読む

領主館へようこそ 40

 ほっと一息。 コビがコーウィッヂの足をつついているが、先日のようなとげとげしい感じはないので単にじゃれついているだけだろう。 気づいているのかコーウィッヂも柄をつついたりしている。 特に会話なし。 でも、ちょっと前まで…続きを読む

領主館へようこそ 39

 昨日の今日ということで遅めになった朝食には全員普通に降りてきた。 キシアスは薬が効いたのか二日酔いはなさそうだったが、無言は変わらず。 ただ、昨日ユンが感じた疎外感もなかった。 というのも、ジェレミーとテトはそれなりに…続きを読む

領主館へようこそ 38

 コーウィッヂはそのまま2階へ、ユンはダイニングの入り口を通過して奥の掃除道具を取りに向かう、そういう想定だった。 でもそのときちょうどチリカがダイニングから出てきたところで。 そのチリカはユンの顔を見、コーウィッヂの姿…続きを読む

領主館へようこそ 37

 領主館の扉が新しくなったように錯覚してしまう。 そのぐらい見た目だけは本館そっくりの別館の前に立ち、コーウィッヂは鍵束の鍵をドアノブの下の鍵穴に差し込んだ。 ドアを開けるや、ユンの手を取り引き込んだ。 びっくりして慌て…続きを読む