カラス元帥とその妻 プロローグ

 その儀式は、厳かに、かつ盛大に行われた。
 国王の結婚式。
 若くして王位に就いたこの王は、古くからの慣習を数多く破ってきた。
 そして今回もまた、破った。
 彼の妻となったのは、一介のメイドだったのだ。無論、賛否両論だった。
 しかし、手をつないで歩く二人は、あまりにも幸せに満ちていた。
 人々はそんな二人を見てこう思うのだ。
 陛下が幸せならばよかろう、と。
 その影で、一人たたずむ女性。それが、この物語の主人公である。
「なんでこうなったのかしら…」
 彼女は別に嫉妬に駆られているわけでも、なんでもなかった。
 だが、その嘆息が、その女性の現在位置を全て説明している。
 ここからは、彼女自身に語っていただこう。
 彼女の名前はアカエ。自らの挙式を、一ヵ月後に控えていた。