眼帯魔法使いと党の姫君 プロローグ

その国には『塔の姫君』がいた。
国王・王妃は、男児が一人生まれるまで、子供を産みつづける。その間生まれた女児は、王宮内の塔のなかで、男性はおろか、女性でさえも、必要最低限の人としか会わずに過ごす。一生”穢れない乙女”として暮らすのである。この女児を指して、『塔の姫君』という。塔は姫の数が増えると建設され、現在は十五もの塔が存在していた。
この塔の姫君を一目見ようとしたり、連れ出そうとしたりする者は絶えなかったが、そういった者たちはみな処刑されていった。
こうして噂が噂を呼び、『塔の姫君は呪われている』だとか、『災いそのものだ』とまで言われていた。
無論、実際は何のことはないただの人である。この風習は、対立している隣国から、激しく非難された。が、国王は頑としてやめなかった。むしろ、『国の伝統保護』を名目に、ますます塔の警備を強化した。現在の塔の姫君はたった一人であるため、効果は絶大だった。
そのため過去一度も、塔の姫君は外部との接触がなかったのだ。
そう。その日までは。
「姫様がいなくなりましたああああーーーーー!!」