長編

昼と夜のデイジー(旧版) 11

 翌日、用事があったんだと言い張るドルを説得するのには、一時間かかった。 「昨日、家の前をモップで飛んだ?」 「うん」 「なんで?」 「なんとなく」 「嘘でしょ」 「うん」  ドルが根負けして、わかったわかったと口走った…続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 10

──―――なによ!! あのセクハラ発言!!  ドルが帰ったあと、ずっとこの調子でいらついていた。  枕を投げつけた後、ドルとは反対の方向を見て、再度文法書を読もうとした。  が、結局集中できず、またドルから横槍が入り、い…続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 9

 今日こそは聞き出してやる。  箒のこと、モップのこと、ドルのことなどなど。聞きたいことは山ほどあるのだ。  そう意気込んだのは、一週間たってから。  この私が一週間ものんべんだらりと過ごしてしまったことがそもそも可笑し…続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 8

 わからない。まったく、わからない。  ドルが持ってきた本を読んでいるのだが、全く意味がわからない。  私に理解できたのは、この論文が有名な昔話『魔女バーギリアとおかしな森』に関するものであることと、その中に出てくる森の…続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 7

 彼は頭をばりばり掻いていた。すでに顔に『くそ~』と書いてあるようなものだったが、実際に口にも出した。 「ホントに知らない? 心当たりもない?」  少し口調が柔らかくなった。と言うより、むしろ不安げになったのだろう。  …続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 6

「…うさま」 「んん…」 「ああ、よかった。目が覚めたみたい」  メイド長が私の顔を覗き見ている。場所は相変らず私の部屋。 「一体どうなさったのです? コルウィジェさんの顔を見るなり倒れるなんて」 「ちょっと疲れてたみた…続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 5

「なにかございました?」 「ううん、なんでも」  メイドは青年を見ていなかったようだ。  部屋に戻るときに、メイドには、散歩が意外と面白かったから、これから毎日出歩きたいと伝えた。  メイドは喜んでいるのかめんどくさがっ…続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 4

 二日ほど続いた曇天がようやく解消されたころ、家庭教師が辞めた。  彼女は別の家に勤めることになった。つまり、さらなる問題児を抱えた家に引き抜かれていったのだ。  召使たちは、私がこれ幸いとばかりにいつものおてんばに戻る…続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 3

 絶対に、おかしい。  箒がなくなってから三日経っても、デイジーの脳裏であの衝撃が薄まることはなかった。  秘密の部屋への入り口は今や完全に塞がれていた。壁のように見えていた隠し扉は、本当に壁になった。ドアの形に真新しい…続きを読む

昼と夜のデイジー(旧版) 2

「うわっ」  バタン…  その音で目が覚めた、のだと思う。 ──―――いっけない。  眠っていたのは一瞬のような気がするが、それは本当なのだろうか。こんなところで長時間眠ったら風邪をひいてしまう。  デイジーにとって風邪…続きを読む