昼と夜のデイジー(旧版) プロローグ

 変な夢を見たことがある。
 七歳か八歳のときだったと思う。
 そのころ私はもう自分の部屋で眠っていた。
 夢の中で私は眠れなくて、暗いから部屋の中はあまりよく見えない。
 夜は少し恐い。
 でも、気分を紛らわせるために何が出来るわけでもないので、少しでも明るいほうへと思って、月明かりが差し込む先の窓に目をむけた。
 そこで、見てしまったのだ。人が空を飛んでいるところを。
 私より少し大きな男の子だったと思う。
 それも、魔法使いのように箒や竜で飛ぶのではない。
 もういいかげん使い古して、白かったはず先端が灰色っぽくよれよれになったぐらいの、薄汚れたモップ。
 男の子はその上に仁王立ちして、上手にバランスを取っていた。
 そして、その男の子と一瞬だけ目が合うのだった。