ゼタとユリアンは今、領主の屋敷のすぐ傍に来ていた。そこにあったのは、歴代領主の墓地。
「…これか」
墓石にはこう刻まれていた。
『ジョット・コーウィッヂ 大いなる改革者にして永遠の謎』
「私のご先祖サマって、なんかすごいことしたみたいね」
「らしいな」
ゼタは墓に花を手向けた。
「どうした?」
ユリアンの面持ちに不思議さを覚え、ゼタは尋ねた。
「この人はゼタの仲間で、あたしはその子孫で、なのにゼタとこうして一緒にいて、ゼタはまた王宮に戻る。そして、ここにいる。不思議よね」
「そういうもんじゃねえの?」
もう一度、墓に目を向けた。
二人はあの家で出会って。二人はそこで暮らして。二人は王宮へ行って。二人はまた戻ってきて。そしてここにいる。確かに、不思議かもしれなかった。ゼタは運命の悪戯に、何か奇妙な歯車の存在を見るような気がした。
「ユリ姉ーー!」
「ゼタぁー」
ロイとヒーリの声がする。二人にはまだ都でのことを話していない。
「じゃあ、行くか」
「ん」
二人はその古びた墓に背を向けて、確かに歩き出す。
二人を祝福するかのように、サァッ、と、雨が降り出した。